住宅の寿命は、人生の半分以下
住宅の平均寿命は日本では約30年、アメリカは約80年、イギリスでは約120年と外国に比べとても短く、日本人平均寿命からみると人生のうち2回も住宅を建てなければなりません。
木造建築が主体の日本家屋と欧米の住宅を一概に比較は出来ませんが、神社仏閣にみられるように高い技術を持った日本の木造建築は、四季を持つ環境の中で長年その佇まいを見せてくれます。
しかし、建てた当時のまま建物が保ってきたわけではありません。数年に一度、あるいは数十年に一度という、大改修という修繕や日頃の手入れを行うことによって、その歴史を私たちに見せてくれているのです。
私たちが住んでいる住宅も同じように修繕や手入れをしなければ、年を追うごとに老朽化するだけになってしまいます。
欧米の住宅はどうでしょう。イギリスでは昔から『ガーデニング』が盛んです。日本でも一時期ブームとなり、現在でもホームセンターなどに行くと、たくさんの品物が置いてあります。アメリカではお父さんが日曜大工となり、休みを利用して壁のペンキ塗りや窓を直したりしています。この為、日本以上にホームセンターには住宅に関する商品が取りそろえてあります。
古い住宅を購入し、自分なりに手を加えて、高く売却して次の住宅の購入費に充てます。購入と売却を繰り返された住宅は、社会的な資産となり、修繕も繰り返されることによって、長年住宅としての機能を保つことが出来るのです。また、住宅が金融資産として経済活動に加わるため、生涯賃金に対する住宅の費用が少なくります。
持ち家思考のある日本はどうでしょう。数千万という費用を住宅につぎ込み、退職後は「悠々自適な暮らしを」と思った時には、住宅ローンは払い終わったが蓄えはわずかばかり。マイホームも老朽化からあちこち修繕をしなければならない。子供がいなくなり部屋を趣味の部屋にリフォームするために蓄えを切り崩す。あれやこれやで、また住宅に費用をかける。生涯賃金に占める住宅費用は3分の1とも言われています。
スクラップ・アンド・ビルドから、ストック型住宅へ
長寿命・少子高齢化とライフスタイルの変化に対応する可変性を持った、『スケルトン&インフィル』という住宅
日本の木造は軸組工法と呼ばれる、柱と梁を組み合わせた骨組み(軸組)を元に、建物を組み上げて造ります。その中でも、伝統工法と在来軸組工法があります。一般的な住宅では在来軸組工法によって建てられています。地方へ行くと伝統工法と呼ばれる土壁をつけて建てる住宅も多く見受けられます。
間取りは襖や障子の建具で仕切られ、多くのお客様を迎えたときなどは建具を取り外すことによって、部屋を広く使い間取りに可変性を持たせています。修繕を行うにも瓦や外壁の板、畳など、必要な部分を取り替えたり修繕しやすくなっています。このことは、日本家屋が世代を超えて使われるよう考えて造られているからです。
現在の日本住宅は自然災害に耐えるよう、金物などで柱・梁を固定し、狭い土地に必要な部屋を持たせて建てるために、可変性とメンテナンスが行いにくい構造となっています。
居住者のこだわりが詰まった間取りの住宅は、他人からみれば購入価値が低く、20数年で資産価値がゼロになる中古住宅は、土地付きで購入され建物を取り壊し、新たな住宅が建てられます。これが日本の住宅の寿命が30年と、短くなる原因となっています。
少子高齢化と地球環境問題が社会経済に影響を及ぼす時代を迎え、住宅も社会的資産と個人資産として、新たな時代へと向かって行かなくてはなりません。今までの古いものは取り壊し、新たに建てるという、『スクラップ・アンド・ビルド』から、耐久性を持たせて手入れをして長く使う、『ストック型』の住宅へと変化を求めています。
長く使うことで、建物の解体に伴う廃棄物を減らし、断熱性を持たせて冷暖房の効率化と省エネ化により地球環境に配慮し、資源を浪費しないこと。『スケルトン&インフィル』という、耐久性のある骨組みと内装を分ける建て方によって、家族構成と成長に伴うライフスタイルの変化に対応できる間取りの可変性を持たせ、世代を超えて住むことの出来る、『サスティナブル』住宅がこれからの日本社会に求められていると考えます。
長寿命を支える”スケルトン”と、ライフスタイルの変化に対応する”インフィル”
今のライフスタイルに合わせた機能型住宅は、一代限りの消費型住宅。世代をこえた生涯資産となる、スケルトン&インフィルという長期持続型の『サスティナブル』住宅。
古民家や伝統工法で建てた地方に見られる住宅は、襖や障子を取り外して部屋を大きく使ったり、柱や壁を取りはらい家族の成長に合わせた間取りを造ったりして、長く世代をこえて住まわれてきました。
現在の住宅は金銭的な事情などから、建築する土地が狭く間取りが自由にとれなかったり、費用を少しでも抑えるために最小限の材料で建てられるため、あとからリフォームをしようとしても壁や柱を取ることが出来ないことがあります。
これでは高額の費用をつぎ込んだ住宅が、その世代限りのものとなり、子や孫の代にはそのライフスタイルに合わず、立て替えによる費用をまたつぎ込まなくてはなりません。
『スケルトン&インフィル』という住宅の考えは、古くからある日本家屋と通じるものがあります。
『スケルトン&インフィル』とは、スケルトン(構造体)&インフィル(内装・間取り)を分けることによって、構造体に耐久性を持たせ長寿命化し、ライフスタイルの変化にあわせた間取りの可変性と持たせた『サスティナブル』住宅とすることが出来ます。
木造でも構造計算をして、耐震性を確かめる工法『SE構法』
現在の建築基準法は、木造2階建て以下の住宅に関しては、「構造計算しなくてよい。」という例外を認めています。ご存じでしたか?
その代わりに、住宅の法律である建築基準法では、資格を持った建築士により、ある一定量以上の耐力壁を設ける基準を守らなければなりません。この「壁の量」で家の安全を決める方式では、本当の強さを科学的に立証することができません。
阪神淡路大震災を契機に開発されたSE構法は、木造住宅に日本初の国土交通大臣認定の「構造計算」システムを導入、すべての家の構造計算を行っています。
そして木造住宅を構造計算する為に、『SE構法』は3つの技術で支えられています。